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虹のふもと

円堂と基山
ゲームのネタがあります


 由来……意味、を問うことの意味?
「まもる……って名前が、好きだったんだよ」
 星を見ていた。むかし、おれはあくまでもグランだった。それが名前だった……ほんもの、オリジナルの名前だった。だけど同時におれは、永遠にヒロトになれないのだった。だからグランだけが残った。ヒロトがいれば、グランはなかった。ヒロトがいなくても、グランはなかった。ヒロトがいて、いなくなったから、グランだけが残った。そういう相対的でふわふわした器に注いでできたのが「おれ」だ。屋根まで飛んで、はじけてしまう。グラン……大地、とかいう揺るぎないものが、とうてい、嘘なんだ。
 はじめて名前を知ったとき、ただ、いい名前だと思ったのだ。それだけだ。まもる、と呼ぶだけで、なぜだか自分自身の存在までも強く認められる気がした。後にも先にもないほんものを知っている自分、を知っている自分……かけがえのないものについての認識。世界にふたりしかいないみたいになったのだ。あのとき。

 どうして、「まもる」なの……おかあさんに訊いてごらん、おとうさんかな? きっとすてきな話を教えてくれるよ。おれはだめなんだよ。おれの名前には意味がなくて、呼ぶたびに別のだれか……だれかが、ゆっくり眠れなくなるっていうだけの、呪いみたいなものだった。むかしはね。意味は自分で見つけるんだよ、いいじゃん、ってきみは、笑うね。
 そうだよ。いいんだよ。もういいんだ、おれはヒロト、これは別のだれかのものじゃない、おれの名前だってようやく……雨と飴みたいに、ぜんぜんちがうんだ。きみが、導いたことだよ。たぶんずっと知らないだろうけど、知らないままのほうがね、きみらしいんだよ。
 「らしい」っていうのが、おれにもようやく解りかけてきた。きみたちに器を壊されてから、「らしい」が、おれのふわふわのシャボンみたいなからだに、じっくり沁み渡ってきた。なるほど、って思ったよ。これだ、ってね。このからだの「らしい」が膜を作ってくれる日がきたら、ようやくおれは「基山ヒロト」っていうものを実感するんだと思った。骨ができて肉がついて皮膚をまとって、重たくなるけど、もうなくならない。それが「らしい」ことの力だ。きみは強かったね、そういうことなんだ。だっておれたちには、きみたちの「らしい」がこれっぽっちもなかったんだから。

「好きだったんだ、だけど置いて行っても惜しくないよ」
 基山ヒロトが完成していく。いままで泡のなかに呑み込んでいたすべてのもの……取り出した瞬間、この手のなかに収まりきらなくってみんな零れていく。でも怖くないんだよ。なぜって、もうおれは「まもる」に寄りかからなくたって平気なんだ。だから、円堂くん、そう、「円堂くん」……と、また握手をしたいよ。触れてほしいんだ、ね、きっとおどろくよ、あの日よりずっと強くてあたたかくなったよ。おれの手のひら。

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